24th 4月2013

OTOSHA41「尖閣問題」Day1受講記録(by JIN)

by JIN

おとなの社会科CS担当のJINです。
OTOSHA41「尖閣問題」Day1の受講記録を書きます。

今年のおとなの社会科では、「議論する力をつけること」を目標として、毎月テーマを決め、月2回のセミナー構成とします。Day1で、テーマに関するイシューを固め、そのイシューを元にFacebookで議論を深めた後、Day2を総括のセミナーとします。

4月のテーマは「尖閣問題」です。デジタルハリウッド大学様のご厚意により、会議室をお借りして実施しています。

Day1の具体的内容については、スタッフの天平さんが紹介していますので、そちらを参照してください。。
http://otosha.com/?p=681

Day1終了後、10日ほど経つのですが、この間のFacebookでの議論を見ていて感じるのは、日本では、尖閣問題について戦略的な議論がなされていない、という事です。尖閣諸島は日本が先に占有していた土地なので、そもそも「紛争」そのものが存在していない、という点に立脚して議論が展開されています。そうなると、ゼロサムゲームにしかならず、日中双方にとって利益を最大化する戦略的思考に行く前に、思考停止に陥ってしまいます。

そこで、本稿では、次の3点から、尖閣問題は日本が明確に領有権を主張できるとは言い切れない事を明らかにします。ここが明らかになって初めて、その先の戦略的な思考に進むことができます。

■史実に照らすと、日本が明確に尖閣諸島を「先占」したとは言い切れない。
■現代の国際法上、「先占」は、必ずしも有効な領有権主張の根拠ではない。
■条約に照らして、日本が明確に尖閣諸島の領有権を有するとは言い切れない。

以下、具体的に書きます。

■史実に照らすと、日本が明確に尖閣諸島を「先占」したとは言い切れない。

日本の「先占」の根拠は、「日本政府は1885年以降数回にわたって調査を行い、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認の上、1895年1月に閣議決定を行って、正式に我が国の領土に編入。」というものです(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/pdfs/3shinjitu.pdf)。したがって、日本の占有以前は、誰の占有下にも置かれていない「無主」ということになります。

しかし、中国の歴史的文献には、15世紀から、すでに釣魚島についての記載が登場します。それらの歴史的文献に触れることなく、「慎重に確認」したと主張するのは困難です。また、日本は1895年に閣議決定を行ってはいますが、それは、あくまで日本の国内手続であり、当時の政治状況に照らせば、現代のようにその手続が他国にも公開の上でなされたとは思えません。

■現代の国際法上、「先占」は、必ずしも有効な領有権主張の根拠ではない。

さらに、仮に19世紀の「先占」が主張できたとしても、その当時の「先占」は、現代の国際法上、領有権主張の有力な根拠とはなりません。

元々、「先占」の論理は、19世紀以前、帝国主義国家が先住民族から土地を簒奪する際に、自らの領有権主張を正当化するためにつくられたロジックです。先住民は、「無主」の状態で土地を利用していたに過ぎないから、明確な形で土地の支配を及ぼすことにした自分たちの「先占」が領有の正統性の根拠になる、との論理です。

しかし、米国・豪州・カナダ等の先住民族の権利が見直されてきている現代社会においては、そのような「先占」の論理の正統性は弱まってきています。

■条約に照らして、日本が明確に尖閣諸島の領有権を有するとは言い切れない。

そのため、現代の国際司法裁判所において、領有権が争われる場合に重要な規範になるのが、条約の解釈です。

まず、戦後の日本のあり方を規定しているポツダム宣言に、尖閣問題に関連する文言が記されています。ポイントは、次の3点です。
①カイロ宣言は履行する
②日本が問題なく主権を及ぼすのは本州、北海道、九州、四国である
③その他は連合国側が決める

ここに、①カイロ宣言が登場します。そして、カイロ宣言では、「満洲、台湾及澎湖島の如き日本国か清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還すること」となっています。

このことから、中国は、先に見たように、15世紀から歴史的文献に釣魚島の記載があることを根拠として、尖閣諸島は日本が1885年に「盗取」したものと主張しています。もちろん、日本は、「慎重に確認」した上での占有であり、「盗取」ではないとしますが、争いが生じ得る点である事は、ここで確認できます。

また、尖閣諸島は、ポツダム宣言において、本州、北海道、九州、四国以外の島であり、③連合国側が、その主権を決める事になっています。そこで、連合国側の盟主である米国の立場が問題になります。この点、米国は、尖閣諸島が日本の「管轄に属する」とは言っていますが、日本の「主権に属する」とは言っていません。尖閣諸島の主権に関しては、「中立」の立場を取っているのです。したがって、③を根拠に日本が明確に尖閣諸島領有の正統性を主張するのも困難です。

その後、サンフランシスコ平和条約においては、
④台湾、澎湖島等の請求権を日本は放棄する
⑤沖縄は、アメリカの施政の下に置く
と規定されています。

ここで、尖閣諸島は、④台湾、澎湖島等、または、⑤沖縄の何れに含まれるのか、解釈の余地が生じます。

また、仮に、⑤沖縄に含まれるとした場合、沖縄は、その後、日本に返還されました。しかしながら、尖閣諸島については、米国は、日本に施政権を返還する旨は述べているものの、主権を返還したとは言っていないのです。先に触れたように、尖閣諸島の主権の帰属に関して、米国の立場は「中立」です。

以上から、条約の解釈に照らした場合、尖閣諸島の主権が日本に属することは自明とは言えず、争いの余地があります。

(by JIN)

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