09th 6月2014

OTOSHA56「哲学:自由がなかったら、どうなっちゃうんだろう?」(by JIN)

by JIN

久々の投稿で、すみません。いつもながら、セミナーの内容詳細は、天平さんの解説に譲り、私は、セミナーの内容を踏まえて、自分なりの解釈を展開してみます。

近代以降の社会において、個人の「自由」は、絶対的な概念として捉えられてきました。ここで「絶対的」というのは、自由を侵害する国家は許さず、国家は、自由を保護するためにだけ、その存在の意味がある、ということです。つまり、自由は、国家を統治する上でのもっとも重要な根本原則です。このように、自由が国家統治の根本原則だとすると、そこには、その正統性の根拠が求められます。というのも、人は、正統性なく統治されることを認めないからです。人は、根本的に、他人に支配されるのを嫌がる性格を持っており、支配される場合はそこに正統性が必要になると言うことです。たとえば、中世欧州における王は、神から王権を授かったという王権神授説を自らの正統性の根拠としていました。そうすると、近代になって国家統治の根本原則となった自由にも、王権神授説に代わるような正統性の根拠が必要となります。

こうした自由の性格から、自由は、ただ人間として生まれただけで当然に有する権利(人権)と同義であり、国家の存在より前に、天から授けられたものとする、天賦人権説が、近代国家における自由の根拠とされています。

この点、カントは、自由の定義を厳格に解釈することによって、自由の絶対的な位置付けを明確にしました。その絶対性は、以下の3つの自由に関するカントによる定義に現れています。

1つは、自由というのは、外からの欲望によって動かされるのではなくて、自らの完全な自由意志によって行動する場合にのみ、その行動を自由と呼ぶことが許される、ということです。たとえば、喉が渇いたから水を飲む、というのは、喉が渇いたという外部要因によって動いているため、自由による行動とは言えません。

2点目は、自由は、自分だけでなくて、他の人すべてが道徳的に正しいと考える行動でなければ、それを自由とは呼ばない、ということです。たとえば、誰もが道徳的に悪だと考える殺人行為は、自由な行為とは言えません。

3点目は、2点目でみたように、自由意志による行動は即ち道徳的な行為であるため、あえて、その道徳規範を乗り越えて反対動機を形成し、違法行為に及んだ場合には責任を問われるということです。このことから、自由を認めるという事は、即ち、ただちに責任をも認めるということにつながります。また、自由意志に基づく行為についてのみ責任を問うことになりますので、心神喪失・耗弱または未成熟な未成年者は刑を免れ、または減軽されることになります。

自由に対する見方には様々な立場がありますが、カントの見解は強力です。私見では、その理由は、以下の3点です。

1つは、自由を厳格に解することで、自由を尊重すべき理由を高めている点です。なんらの欲望にもとらわれない自由意志とは、即ち、キリスト教で言う所の神の振る舞いです。私見では、カントは、神の振る舞いを人間の心の中に降臨させることで、自由の権威を高めました。人間は、少なくともその一部は神の似姿を保っていて、その似姿こそが自由そのものです。そして、神の意志=自由意志を人間は備えているからこそ、それゆえに、他の動物と区別されます。このことから、自由意志を持っていない者は人間では無いという結論に行き着きます。逆に、自由にそうした崇高な立場が与えられるが故に、自由は権力の源泉となるのです。

2点目は、自由を道徳と同義とし、自由の主張は必然的に道徳に制限を伴うとすることで、逆に、絶対的な権利である自由に対して、道徳以外による制限を拒否している点です。たとえば、自由の主張が国家の公共の利益に反するとの理由で認められないという見解に対して、その公共の利益が道徳に沿わないのであれば、その見解を拒絶できるのです。このカントの見解に従えば、自由は、自由そのものが持つ内在的制約のみに服し、自由の外側にある理由による制約は許されないという結論になります。そして、これは、今日の憲法学における圧倒的通説です。

3点目は、人類共通価値を参照しないと合理的な説明がつかないような論点について、自由=道徳の観点から、強力な持論を展開できる点です。たとえば、1人の人を突き落とせば多数が助かるような場面において、最大多数の最大幸福を追求する功利主義の見解では、突き落とす行為を無罪とする方向に傾きますが、道徳を参照するカントの見解からは異なる結論を導くことが可能になります。

・・・やはり、改めてカントの偉大さを思い知りました。

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