17th 9月2012

OTOSHA35「米国の貧困が日本にもやってくる」day1受講記録(by JIN)

by JIN

おとなの社会科CS担当のJINです。
OTOSHA35「米国の貧困が日本にもやってくる」day1の受講記録を書きます。

本稿では、受講者目線で、セミナーの受講記録を書きます。なお、一部JINの私見にわたる個所が含まれる点、ご容赦ください。

9月は「米国の貧困」をテーマとして、3回、セミナーを行います。同月は、デジタルハリウッド大学様のご厚意により、教室をお借りして実施します。

Day1では、米国の医療制度について、議論を深めました。

Day1のポイントは、次の3点です。
■米国の医療保険制度は自己責任原則に根差している
■過度なコーポラティズムが保険制度に歪みをもたらしている
■TPPは、日本の健康保険制度を破壊する

以下、具体的に書きます。

■米国の医療保険制度は自己責任原則に根差している

米国の建国は、英国による徴税に対する反発を機にしています。そのため、基本的に、社会保険料も含め、国による税等の徴収を嫌うメンタリティが強くあります。こうした背景から、米国の医療保険制度は、企業の福利厚生の一環として設けられているものが主になっています。

したがって、企業に勤務している間、および、リタイア後の保険については整備が進んでいます。

しかしながら、失業してしまった場合については、企業による保障の対象外となるため、保険の枠外に置かれてしまいます。また、保険会社も、保険金が高くなりうまみも少ない失業中については余り手を出しません。その結果、失業すると、望んだ高額の医療が受けられなくなるという実態があります。

とはいえ、米国では、転職市場の流動性も高く、人生にセカンドチャンスを与えるというセーフティネットとして機能してきました。そのため、失業のリスクを抱えつつも、自己責任原則を貫くものとして、企業主体の医療保険制度が、それなりに納得感を持って維持されてきました。

■過度なコーポラティズムが保険制度に歪みをもたらしている

しかし、1990年代の共産主義の崩壊に伴って、資本主義の弊害に抗う強力なイデオロギーは息をひそめることになりました。その結果、企業が金儲けを自己目的化する価値観について異を唱えられる事もなくなり、金が金を生む状況が加速し始めました。

もちろん、以前も、企業による政治に対するロビー活動は存在していました。ただ、それは、政治家個人を買収するレベルに留まっていました。しかし、グローバルレベルでの強烈な金儲けにより桁違いの財力を得るようになった企業は、政治そのものを乗っ取る事が出来るレベルにまで影響力を拡大するようになりました。

こうした過度なコーポラティズムが、米国の保険制度にも大きな影響を及ぼすようになっています。

本来、企業の自由競争は、医療価格の低下を招くはずです。しかし、逆に、医療費は高額化の一途をたどっています。それは、製薬会社が高額な薬品の認可を取り付けるために政治を動かし、保険会社が医療過誤訴訟の保険金高騰化を仕掛けて保険料増額の結果をもたらしているからです。

結果、製薬会社・保険会社の富は巨大化しますが、そのしわ寄せが個人に及んでいます。
こうした事態を受け、オバマは失業中の低所得者層向けの保険制度導入を公約に掲げましたが、今一つ受けは良くなく、十分な実施には至っていません。その背景には、米国人が、なんとなく保険制度の欠陥に気付きつつも、その歪みをもたらすメカニズムにまでは考えが及んでいない事があるものと考えられます。

■TPPは、日本の健康保険制度を破壊する

他方、日本においては、失業中も含め、基本的に国が保険者となって、全国民が保障される国民皆保険型の健康保険制度が完備されています。逆に言えば、この「国」という枠が外れて私企業が参入できる事を仮定した場合には、そこには、莫大なマーケットが眠っているという事です。

実は、ここ数年、米国が執拗に日本に迫っているTPPの狙いの1つが、この健康保険制度にあります。

TPPには、ISD条項というものがあります(投資家対国家の紛争解決 (Investor State Dispute Settlement、ISDS) 条項)。これは、投資家が、外国政府についてTPP違反と考える場合に国際仲裁機関に対して訴える権利を認めるものです。この場合、訴える相手国における裁判手続きを経ずに決着が得られる事になります。これによれば、たとえば、米国生命保険会社が、日本の健康保険制度の不備を訴え、国際仲裁機関がそれを認めれば、健康保険制度の改定を余儀なくされる事態が生じ得ます。

具体的には、健康な富裕層をターゲットにして外資系生保が乗り込んでくることが考えられます。健康保険は障がいのある低所得者層も含めてカバーしていますので、健康な富裕層だけで保険をつくれば、後者には有利な条件で保険金を設定する事が出来ます。現在、健康保険でカバーされている保険領域について、そこに参入できない事は不合理とISD条項に基づいて訴えを起こすことが考えられます。米国では国民皆保険制度を取っていないので、その基準に合わせるべきだと。この主張は、健康な富裕層には受けが良いものなので、社会主義が退潮した日本の国内においても支持が得られる可能性が高いです。

そうなると、国民皆保険を旨とする日本の健康保険制度は破壊されます。そこに広がるのは、一部のメガ金融だけが生き残る荒涼とした世界です。

(by JIN)

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